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写真日乗2015/04/18~平成中村座、再出発~ [Summicron M 35mm f2.0 ASPH.]

20150418l1008572

撮影:2015/04/18 東京・浅草
Leica M9-P Summilux-M 35mm f1.4 ASPH.

平成中村座といえば、隅田川河岸の仮設小屋として、十八世勘三郎が建て座頭を勤めた芝居小屋であることは周知の通り、2000年が最初だというからかれこれ15年ということになる。
その小屋も勘三郎の死で途絶えていたが、浅草寺の境内で復活するということで、早々に「陽春大歌舞伎」と銘打った公演の夜の部のチケットを確保して出かけた。
十八世が存命中の平成中村座には、多くの幹部俳優が「中村屋のお兄さんに言われれば...」ということで、舞台に立ったものだが、今回は、橋之助、国生、児太郎、獅童といった親戚筋に、坂東新吾、片岡亀蔵といった、勘九郎、七之助と行動を共にする役者のみの出演となっており、少々さびしい。
夜の部の演目は、まず「妹背山婦女庭訓」の「御殿」で、お三輪を七之助が勤める。豆腐買い娘のお柳役で七緒八が登場、そのあたりも見所なのかもしれない。とはいいながら、義太夫狂言である。細かな所作がきちんとできていなければ、しまりのないものになる。玉三郎演出のものが採用されているらしいが、七之助と玉三郎では、キャリアも違う。家の芸として、型で覚えていくものがないこの芝居に七之助が挑戦したのは、どうやら十八世が娘役の大役を「やってみたい」と生前に言っていたから、ということのようだ。七之助自身、二度目なので、工夫はできているとは思うのだが、嫉妬に狂った女の雰囲気は希薄だった。
劇評家の渡辺保氏は自身のブログで、「七之助は男になってしまう」という趣旨のことを書いおられたが、まさにそのとおりである。男の嫉妬など、芝居にはならぬもの。女形としての熟成が待たれる。蘇我入鹿の生々しい生き様を頭に置きつつ、お三輪のほぼ独り舞台の様相のこの段だけを見て、壮大な権力闘争と殺戮の物語の全容が見えてこないと楽しめない。そのようなことを実感した次第である。
次は「高杯」。これは十七世、十八世の十八番であったもので、勘九郎としても家の芸として、後世に残していく使命を課せられている。十八世の高杯では、次郎冠者の例のタップダンスのまえに、観客から「待ってました!」と声がかかるほどだったが、勘九郎のそれは、手探りの状態。まだまだ声をかけるほどではない。ちなみに太郎冠者は鶴丸。十八世の弟子として、異例の抜擢が続く若手だが、彼も勘九郎、七之助と同様に、教えを請う者を失ったという点で、これからが大変である。
最後が、「幡随長兵衛」である。本日の役者総出演のこの狂言は見ごたえがあった。新しい歌舞伎座でも、海老蔵がすでに「長兵衛」を勤めているが、この芝居は、ここ平成中村座にはぴったりの演目だ。長兵衛役の橋之助だが、国立劇場で先日勤めた髪結新三よりはるかにはまっており、ニンである。近藤登之助(亀蔵)、水野十郎左衛門(彌十郎)が二階のお大臣席のすぐ横から長兵衛を挑発したり、花道ではなく通路を役者が駆け回ったりで、この小屋らしい演出は、ぴったりはまっていたと思う。
この座頭はもちろん、橋之助である。勘九郎も十分できそうな長兵衛であるが、「そこまで手が回らなかった」というのが、本音なのではないか。ぜひ勘九郎にやってもらいたい。
ということで、前途多難な中村屋を目の当たりにしつつも、こういうときにこそ、チケットを求め応援しなければならないと強く思った。


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