SSブログ

「命を守る」という言葉の欺瞞 [日記]

20210412-_DSC0831.jpg

2021年4月 国営ひたち海浜公園にて

日本は、「少子・高齢化社会」であるといういわれ方をしているが、正確にいえば、「少子・多死社会」である。2019年の日本の死亡者数は138万人程、その一方、出生数は86万5千人程である。

少子・高齢化というと、生まれてくる子供が少なくなる一方で、高齢者は生き続けるというイメージがあるが、毎年亡くなっている138万人以上の85%は70才以上の高齢者である。高齢者が先に死んでいくという、ごく当たり前のことが起きているのである。

そのうえで新型コロナウイルスの感染によって死亡した者の人口の割合をみてみると、性別も年齢も非公表という層を除くと、期せずしてこの70才以上85%とぴったり重なる。要すれば、コロナ以前の多死社会の状況と何ら変わらないことが、コロナ医療の現場で起きているのだ。

コロナ渦の日本における年間の死亡者数は2020年、むしろ減少している。厚生労働省が2月に発表した人口動態統計によれば、死亡者数は前年比9,373人(0.7%)減の138万4,544人であり、11年ぶりの減少だった。一方、出生数は2万5,917人(2.9%)減の87万2,683人で過去最少を記録している。2020年という一年だけをとれば、少子化が急加速する一方で多死化にわずかではあるがブレーキがかかったといえる。

長寿はその文字の表すようにめでたいことだとされてきた日本であるが、コロナ渦、施設、病院で肉親の誰にも看取られず死んでいくコロナ感染の高齢者は、めでたくはなかろう。だからといってターミナルケアの段階に入った高齢者の寿命を延ばすことは、人間の尊厳という観点からいってむしろ問題が多い。寿命を伸ばすために不必要な医療行為を続けることは、高齢者医療、介護という公的枠組みを壊しかねない。

コロナ禍で特に低所得者層の所得が激減しており、所得税、消費税の税収に加え現役世代の支払う年金保険料、健康保険料は減少することは間違いない。高齢者の寿命を徒に伸ばそうにも、その財源となる税も保険料も入ってこない。その限りにおいて政府が頼えるのは赤字国債のみである。そしてその債務は、現在の高齢者でも現役世代でもない、年々、出生が減る子供の世代が負うことになる。

コロナ禍でより明らかになったことは、行きすぎたシルバーポピュリズムがこの国を滅ぼすということである。「命を守る」という一見、美しい言葉の裏に、瓦解する日本社会の姿が隠れていることに早く気づくべきだ。政治家達は秋までに行われる総選挙のために、高齢者に「命を守る」と言い続けるのだろうが、それが欺瞞そのものであることを有権者は知ってほしい。

不要な緊急事態宣言の根拠となる「命を守る」という言葉こそ、日本を奈落の底に落とすものである。

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

合成の誤謬|- ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。