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写真日乗2015/11/03~ソヒエフ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団のコンサートを聴く~ [Leica M8.2]

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撮影:2015/11/03 於:東京・サントリーホール
Leica M8.2 Summicron-M 35mm f2.0 ASPH.

ラグビーのワールドカップは、ニュージーランドが宿敵オーストラリアを破り、初の連覇を遂げて幕を下ろした。この6週間、眠い目をこすりながら見てきた大会の決勝が、やはり最もエキサイティングでレベルの高い試合だったと思った。
その余韻に浸りながらも、やはり秋が深まるとクラシック音楽にのめり込んでいく。既に書いたとおり17年ぶりにCDプレーヤーを買い替え、毎日、そのエージングのためにクラシック音楽を聴いているが、今週、来週は、同じ火曜日にサントリーホールに通って、オーケストラとピアノ独奏のコンサートを聴く。
今日は、ベルリン・ドイツ交響楽団(Deutsches Symphonie-Orchester Berlin)の演奏会である。指揮者は、トゥガン・ソヒエフ。ロシア出身の30代の指揮者である。欧州でも注目を浴びているようで、同僚のクラシック通と話すと、「世界の若手指揮者のなかでも、十指に入るだろう」とのことである。
私にとって、聴いてみようと思う若手指揮者は、まず日本のオーケストラでの客演で聴くことにしている。実際にホールで聴くこともあれば、NHK交響楽団のテレビ放映で確認することもある。そのうえで、良いと思った若手指揮者が振る海外オーケストラによるコンサートのチケットを買い求める。今回は、これまで全く聴いたことのない指揮者で、ディスクも持っていない。来年1月のNHK交響楽団の定期で登場するということで、そのチケットは早々と手に入れていたが、その後、それならばと今日のコンサートのチケットを入手した次第である。
指揮者も注目していたが、このオーケストラにも注目していた。その昔、RIAS交響楽団と呼ばれてたラジオ・シンフォニー・オーケストラであるが(Radio In the American Sector Symphony Orchestra)、それは西ベルリンを統治していた米国の占領地区放送局の設立したオーケストラとして発足、東側から逃れてきた音楽家の受け皿になったという歴史を持つという。ドイツの東西統一後に、現在の名称になり活動しているが、最近では、ケント・ナガノやインゴ・メッツマッハーが主席指揮者を務めており、私もデケント・ナガノ時代のディスクを何枚か持っている。ディスクでは、ドイツ伝統の響きを聴けるという安心感のあるオーケストラであるが、これまで来日公演を聴いたことがなかった。
今日のプログラムは、メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」 とベートーヴェンの ピアノ協奏曲第3番ハ短調(ピアノはユリアンナ・アヴデーエワ)が前半、休憩を挟んで、ブラームスの交響曲第1番ハ短調がメインである。アヴデーエワについては、アルゲリッチ以来の女性ショパンコンクール優勝者として騒がれているが、男性ピアニストの超絶技巧派とは全く雰囲気の異なるテクニシャンという感じがする。変幻自在で、どのようにでも弾ける感じで、譜面の読みによって私たちが想像もしない世界に導く。私は、ちょうど昨年の今頃、ミューザ川崎で彼女のピアノリサイタルを聴いているのだが、そのときの自分のブログを読み返してみると、「この人は、いわゆるショパン弾きではないのではないか。ショパンの独特の節回しがまだできていない、というより先人たちの模倣もしていないところが如実にわかる演奏で、疑問符のつくような部分も少なからずあった」と書いている。
今回はベートーヴェンでは冒険はせず、しかし背後から見ていても深く瞑想をするような長い休符を設けるなど、音楽の深さを感じた。ソヒエフは完全に伴奏に徹しており、個性を見せる場面はなかったといって良いだろう。アヴデーエワがアンコールで演奏したのはショパンの「雨だれ」だったが、これが実に良かった。左手の絶妙さは、まさにショパン弾きそのもの。1年ほどでうまくなったということでもないようで、私自身が聞き逃していた彼女の本質なのだろうと思う。
メインのブラームスについては、一言でいうならば、「ドイツ音楽の重厚な演奏」ということにつきる。ソヒエフは、かなりテンポは動かしていたが、決め所では、伝統的な厚みのあるハーモニーでまとめきるというスタイル、聴いていて安心できた。ソロのパート部分もみな完成度が高く、このオーケストラの実力の一端を垣間見ることができた。
ソヒエフのもとでもう3年も演奏しているがゆえの、双方の理解度の深さが演奏に表れていた。常任、あるいは主席の指揮者とはいえ、来日の回数、滞在日数が少ない日本のオーケストラの場合、ここまで指揮者の意図を音楽として昇華させることはできないのではないか。先日、ミューザ川崎で聴き感動したノット/東京交響楽団のマーラーの交響曲第3番の演奏会と比べても、彼我の熟成度の違いは相当あったといわざるを得ない。
ソヒエフにとっては、ここを踏み台として、よりメジャーなオーケストラと契約を結べるだけの実績が必要となる。先日、キリル・キタレンコという中堅指揮者がベルリンフィルの主席指揮者・芸術監督に選ばれたが、当然、そうしたキャリアのつくりり上げ方をソヒエフも意識しているに違いない。
ということで、アンコールの2曲、グリーグの「2つの悲しい旋律から過ぎし春」、モーツァルトの「フィガロの結婚序曲」ともども、大変楽しめたコンサートだった。


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