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写真日乗2018/04/24〜これが最後の仁左衛門「絵本合邦衢」〜 [日記]

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撮影:2018/04/24 於:東京・歌舞伎座

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4月の大歌舞伎は、南北の「絵本合法衢」である。左枝大学之助と立場の太平次という悪の二役を仁左衛門が勤める。当り芸であるが、初演は幸四郎、昭和の復活は左團次というから、江戸の色合いの濃い演目だ。仁左衛門が「一世一代」と銘打った公演だが、それは「これが最後」ということだ。

場割りは、国立劇場にかかった時と同じ。

序幕は、「水門口」「鷹野」「陣屋」である。 序幕から気づいたことだが、国立劇場の時より分かりやすい。スピード感があって、物語が前に進む感じといえば良いだろうか。仁左衛門自身がかなり手を入れたようで、今の自分のテンポに即した演出なのだろう。大学之助は、子供を惨たらしく切り捨ててしまう、悪中の悪、にらみも効いていて、館内をそれだけで制する迫力であった。「鷹野」では、お亀を家来に口説かせる。この悪人は、お亀をこの先、何かで利用しようと考えてそうしているわけだが、そのあたりがはっきりと分かるのが、仁左衛門のすごいところ。「陣屋」では、子供の里松を切り捨てられて駆けつけてきた父親・佐五右衛門の思いなどつゆ知らず、エゴイストぶりを見せつける。一瞬、改心するところを見せるが、悪人の改心ほど嘘くさいものはない。瀬左衛門を殺し、しかも家来まで殺して罪をなすりつけるという算段である。幕切れでは軍扇をサッと開いて顔を隠し、それ少しずつ外してニッタリと笑い、舌を出す。これには驚いた。

二幕目は、「四条河原」から、二幕、三幕では、太平次である。ここでもスピード感に富んだ 悪事の連続である。うんざりお松は時蔵だが、このコンビを超える役者が今後出てくるのだろうかと思うほどの間合いの良さである。次の場、「道具屋」では、錦之助が勤める与兵衛殺しに失敗する。そして、後家のおりよを殺す。一連の流れが洗練されていて、観る者に殺しを納得させてしまう。「妙覚寺裏手」では、秘密を知られたお松を井戸端で騙し殺す。この芝居の中でも見どころの一つだが、この場面だけを見ても、当代最高の演劇だと言える。邪魔な者は殺すのが太平次という男の大原則だが、利用してから殺すのである。

三幕は、「倉狩峠」から。太平次の営む立場での空々しい与兵衛夫婦の迎え入れから、与兵衛切りつけまでの流れは面白く見ることができた。黒御簾の合い方に乗って引っ込むところは面白い。

大詰は、再び大学之助。「合法庵室」「閻魔堂」では、殺された瀬左衛門と敵を討つ弥十郎を彌十郎が二役で勤める。その妻、皐月は、前の幕で殺されたお松との二役で時蔵。すっきりした武士の女房である。錦之助の与兵衛は、最後まで一貫していて、この人のニンである。孝太郎のお亀、萬次郎のおり、吉弥のお道、団蔵の佐吾右衛門、亀蔵の孫七など。仁左衛門のやりたい「合邦街」を見事に作り上げた。

まさに「一世一代」の舞台だった。

 

 


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