写真日乗2017/08/09～「野球の日」ではなく～

撮影：2017/08/09 於：東京・銀座
Leica Q Summilux 28mm f1.7 ASPH.

８月９日は、最近、語呂合わせで「野球の日」などと呼ばれているらしい。

スポーツ用品メーカー・ミズノの直営店・エスポートミズノが記念日に制定したらしい。それに体して私は、異議を差し挟みたい。この日は、長崎に原爆が投下された日である。
最近の若者は、広島の原爆投下の日も長崎の原爆投下の日も終戦記念日も正確に答えられない者が多いという。そのことを聞くにつれ、「昭和は遠くになりにけり」という感慨を深くするものである。折しも、全国高校野球選手権大会が開かれているために、８月９日が「野球の日」と認知されやすいのかもしれない。
私自身、まだ住民票がのある横浜の市域にある学校が甲子園に出場すれば、かなり気合いを入れて応援をする。今年は、横浜高校が神奈川県代表として出場するのだが、その４番打者の増田珠君は長崎県出身である。横浜高校で甲子園を目指し、将来はプロ野球選手になりたいと、わざわざ全国で一番、県大会参加学校数の多い神奈川の学校を選んだ。その増田君が毎日新聞の取材に、長崎での原爆投下について、こう答えている。

・・・原爆を意識するようになったのは、幼いころ一緒に風呂に入った祖母・久美子さんの体に残る傷痕を見て、「何でこうなってるの」と尋ねてからだ。

・・・小・中学校の授業でも被爆直後の長崎の様子、今も続く被爆者の苦しみを学んできた。原爆投下時刻には同級生たちと一緒に黙とうをささげるのが、長崎での８月９日だった。

・・・それが当たり前でなくなったのは、神奈川県に引っ越してからだ。原爆の日が近くなっても、長崎のように同級生の間で「今年もあの日が近づいてきた」という雰囲気はない。他の野球部員に「８月９日って、何の日か知っている？」と尋ねても、「野球の日だろ」という答えが返ってきた。ショックだった。

やはり、ミズノは、「野球の日」と名付けるのは撤回すべきだろう。朝鮮半島有事で、核が使われる可能性が皆無とはいえない状況の下で、野球がいつできなくなってもおかしくないという感覚は、老いも若きももっておいた方が良いだろう。