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2017/04 短歌作品「上野」 [短歌]

風薫る五月生まれのわれながら「春は苦手」と今朝つぶやきぬ

甲高く声あげ蕾の桜木のもとを幼児の列がすすみぬ

春祭の「指輪」この春完結となればわが身の定年も春

多国籍多民族多言語の今日日花見のすさまじきかな

早々に退散したりわれ肩に染井吉野の花びらを乗せ

頑なに「指輪」を演奏会方式によりて奏でるヤノフスキ氏は

われよりも十八年上ヤノフスキ氏、背筋を伸ばし指揮台に立つ

拘束の三十七年終わりただ「神々の黄昏」聴き入るばかり

終演まで五時間半の長丁場、ヤノフスキ氏は腰をさすりぬ

咲きすすむ速度の遅きこの春のさくら花びら霧雨に濡れ

週末ごとそぼ降る雨に走りゆく右の臀部は依然痛くも

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撮影:2017/04/04 於:東京・上野公園
Leica Q Summilux 28mm f1.7 ASPH.


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2017/03 短歌作品「大手町」 [短歌]

  今朝もまだ防寒姿の人びとの両の手スタバのカップを包む

  ビル風の吹き抜けてゆく冬型の西高東低くずれていても

  舞い上がり暗殺とう文字見え隠れする新聞の一面拾う

  再開発地区に花木の類なし等間隔にフラワー飾る

  高層のビルのガラスに反射して淡き春の陽ヒジャブを照らす

  日なたにて若き白人ふざけあいその後ロビーでスマホを見入る

  肌黒く半袖のまま闊歩して高層階行きエレベータに消ゆ

  影日なたのまだら模様をつくりだすビルに息づく多文化主義は

  潮の香のただよい時雨の降りはじめ首都高下に人の佇む

  人生の切れ端のごとその日まで時間に追わるるままに過ごさむ 

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撮影:2017/03/07 於:東京・大手町
SONY α7RⅡ Carl Zeiss Sonnar T* FE 35mm f2.8 ZA


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2017/02 短歌作品「春へ」 [短歌]

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2017/02/09 於・東京・新宿
Leica Q Summilux 28mm f1.7


 悟空とクイーン斜向かいにある角まがり聞き覚えなき言語が刺さる

 この町の在留届に記さるる百二十数カ国は何処

 体脂肪燃やしてゆくに諸準備のひとつ身体を揺らしておきぬ

 マドンナの歌声消えゆく五本目のサイドランジに床ぬらす汗

 Go Shape, Make Bodyと次々にマシンは埋まり動きはじめる

 観の目を保ちて静かに上体を起こすグリコの姿勢のままに

 今日もまた海兵隊のメソッドによりて体幹鍛えておりぬ

 麻央さんのブログ読みつつ乗りこめばエレベータに子ら騒がしく

 雲なけれども星かがやかぬ駅頭にしばし天空見あげておりぬ

 裏通りに星のいくつか見えはじめスマホをいじる男をかわす

 無灯火の自転車飛ばす青白く顔照らされて死にゆくごとく

 弓張はしずむ気配のなきままに丘のうえより団地を照らす

 節分のよるは風止みあたたかく「福は内、福は内」と声しぼりだす

 立春のあさ足下のカタバミは黄色き花弁しずかにひらく

 ベランダの洗濯物のあいだよりのぞく笑顔に合格を知る

 両の手でわれ丸つくり合図してわが子のことのように喜ぶ

 丹田に意識あつめて力抜きゆるき坂道すいすいのぼる

 梅咲けば春じんわりと感じたり前途曖昧なれどもはしる


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2017/01 短歌作品「道」 [短歌]

 この春の開通に向け高架上はしる車輌に導風板あり

 一斉にかもめ群がる水面には冬陽きらめき諦めもある

 見霽かす河口に川鵜は生きておりときおり潜りしばらく消える

 モチベーション、コミットメント、プライドの交錯しつつ定年となる

 「生きるため」とは偽りであり還暦間近われ悪あがき

 初春のお供え餅に伊勢海老の一匹、ダミーのわが人生は

 フォアグラの練り込まれているテリーヌが今宵わが家の夕餉なりき

 一升瓶よりワインとくとく注ぐときグラスに映るわれの首筋

 裏道をゆけば雨粒の落ちてきて猫より声をかけられており

 足音の違いわかるか猫は二度三度ないては前足舐める

 雨あしの強まり足あと残すことなくて存外ひと多き刻

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撮影:2017/01/05 於:東京・銀座
SONY α7RⅡ Carl Zeiss Sonnar T* FE 35mm f2.8 ZA


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写真日乗2016/12/10~旧かな遣いの二人(短歌人本誌寄稿文)~ [短歌]

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撮影:2016/12/07 於:東京・銀座
Leica Q Summilux 28mm f1.7

このところ、新年歌会などに出席していないため、新しく短歌人に加わった人たちのことを知るすべがない。ゆえに、毎年八月に組まれる「20代・30代会員競詠」は貴重だ。

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2016/10 短歌作品「襲名」 [短歌]

  興行と芸道の二百年ない交ぜのままの歌舞伎は

  はなやかに襲名の月迎えたる十月雨の多きこの頃

  芝翫以下子の三人橋之助福之助歌之助四人の披露

  諸先輩方のお許し、並びに関係各位のご賛同を得て

  雀右衛門、芝翫とつづく襲名の新歌舞伎座は三年目の憂

  勘三郎、團十郎、三津五郎失い穴のあきたるままに

  藤十郎、吉右衛門に菊五郎、玉三郎そろい始まる口上の幕

  芸の道深淵なれど人の道軽々とゆく梨園のひとは

  それぞれに事情はあれど肥やしなどになると許さる「とざい、とーざい」

  松綠の「外郎売」の長ぜりふ眼つむれば二世の浮かぶ

  藤の精勤めるひとは国宝の玉三郎ゆえ本日大切

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撮影:2016/10/09 於:東京・歌舞伎座
Leica Q Summilux 28mm f1.7


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写真日乗2016/09/13~汚れたる土地~ [短歌]

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撮影:2016/09/13 於:東京・大手町
SONY α7R II  Carl Zeiss  Sonnar T* FE 35mm f2.8 ZA

月刊「文藝春秋」10月号には、歌人の高木佳子氏の「未草抄」7首が載っている。そのうちの1首は、このような歌だ。

 人はひとを圧して生くるほかなきか汚れたる水汚れたる土地 

豊洲への築地市場移転問題は、新市場建設の工法などが決まった経緯の解明に関心が移ってきた。盛土を行うことで、土壌汚染の影響を最小限にとどめようとしたのだが、どういうわけか、施設の建物の建っている部分には盛土が行われず、大きなコンクリートで仕切られた空間が地下にあるのみだという。

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2016/08 短歌作品「酷暑」 [短歌]

夕闇は迫れど熊蝉なきやまぬハイブリッド車路地すり抜ける

廃熱の漂う辻を曲がりきて住吉神社の鳥居前に出る

灯籠にオレンジ色の灯のともる人らそれぞれひとりを生きる

カルガモが小さき池の中島に上がりてわれの前を横切る

ひげ猫はすわりて視線を変えぬまま右耳細かく動かしており

額には汗浮かべるも涼しげに歩むひとらの多き博多は

博多より帰り来たれば東京に東風の吹きホームに涼む

夜半にわれ強く歯軋りしてるらし奥歯を押せばぐらりと動く

歯科医なれど夏季の休暇はしっかりと取るのがよしと思うが痛し

神経を抜く十日後の治療まで咀嚼しがたき朝昼夕食

パンプキンプリンを右の口蓋に舌で送りてしみじみ食す

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撮影:2016/08/04 於:東京・早稲田大学
Ricoh GR


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2016/07 短歌作品「夏」 [短歌]

 炎熱の坂道をゆく少女らに追い抜かされて横顔見つつ

 少女らのポニーテールやお団子の髪はかがやく夏の日差しに

 坂道は下りにかかり大木の欅の日陰ルリマツリ咲く

 ニイニイゼミ鳴きはじめれておりサングラスをキャップにかけて林を見いる

 三キロごと休みてクエン酸をとるメソッドにより夏を走りぬ

 月三百キロ走りて備える秋冬のフルマラソンへ遠き道のり

 小鬼百合咲く交番の脇の土地スズメ降り立つ日陰となりて

 投票日当日すでに十八時、投票所の脇てくてく歩く

 右手にはトイレットペーパー持ち左手にアイスクリーム持ち家路を急ぐ

 二十時となれば出口調査にて過半の当確打たれておりぬ

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撮影:2016/07/18 於:横浜市・鶴見
SONY α7R II Carl Zeiss Biogon 25mm f2.8 ZM


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2016/06 短歌作品「家」 [短歌]

 

 『家族の歌』久方ぶりに読む午後の書籍整理は手につかぬまま

 わが家にて歌詠む者のひとりわれ深く悲しみ果ての寂しさ

 いつまでも網戸越しにて吠えまくる犬にらみたるわれ犬嫌い

 躾できぬ人の育てる犬はただ鋭き眼こちらに向ける

 救急車迫り来るとき遠吠えが見事に野生の証しとなりぬ

 通りがかりの若者ふたりそれ聞きて大笑いをす月夜の晩は

 無駄吠えを家護りたる忠犬の証しと言い張る神話のごとく

 締切りの雨戸のなかに無駄吠えのくぐもりからりと晴れわたる朝

 紫陽花は南風うけ丸顔の幼女のように首かしげたり

 ゆったりとあゆむ駅への道の辺にくちなしの香のかぎりなきかな


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2016/06/03 於:東京・銀座
Leica Q Summilux 28mm f1.7


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