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写真日乗2017/06/17〜大歌舞伎の面白さ〜 [日記]

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撮影:2017/06/17 於:東京・歌舞伎座
Leica Q Summilux 28mm f1.7 ASPH.

今月の歌舞伎は、ざっと見て、成田屋、成駒屋、中村屋以外は総出演の感のある豪華メンバー、幹部級、人気役者の至芸が楽しめるものだ。

私は夜の部を選んだが、義太夫狂言の「鎌倉三代記」、黙阿弥の「御所五郎蔵」、長谷川伸の「一本刀土俵入」とそれぞれ見所の多い名作が並んだ。
「鎌倉三代記」は、美しい時姫の姿が見られる「絹川村閑居の場」であり、雀右衛門が襲名披露公演以来の時姫を勤めた。少し硬かったあの時とは比べものにならないほど、やわらかく品のある時姫、三浦之助が染五郎から松也に代わってはいるが、自身で身につけたテンポで悠然と進める立派な時姫であった。佐々木高綱は幸四郎だったが、その大きさに感服しながらも口跡が曖昧なためか、聴き取りたいところでよく分からないというもどかしさはあった。松也は抜擢だが、懸命に勤めていた。特筆すべきは長門を勤めた秀太郎。この役は、出演時間が極めて短いが、他の段とのつながりを意識させてくれるもので、さすがに義太夫狂言の味を出すには、秀太郎ほどの名優が絡まないといけないことが理解できた。それに加えて、おくるを勤めた門之助もなかなか良かった。
次は、「御所五郎蔵」である。仁左衛門と左團次が江戸の任侠の世界を色濃く見せた。仮花道がつくられ、仮花道に五郎蔵一家、本花道に土右衛門一門が並ぶという趣向。この構成がなかなかかからない原因なのか。仁左衛門も左團次も自然にやり取りをしていて、すっきりしているだけではなく、随所でコクが出る。歌六が仲裁役の甲屋与五郎、雀右衛門が傾城皐月が勤めたが、ここまで名優揃いの「御所五郎蔵」はこの先見ることはできないのではないだろうか。勘九郎が勘太郎時代に勤めているというが、若手で組まれたものも観てみたい。それは、先日、同じく歌舞伎座で見た菊五郎、歌六、左團次の「四千両」でも感じたことだが、今は幹部俳優の芸を中堅どころが引き継がなければならない時期だと思う。
最後が、幸四郎十八番の「一本刀土俵入」である。長谷川伸の新歌舞伎だが、こうした世話物につきものの下座音楽が一切なく、役者たちの間合いで芝居をつくっていく面白さを楽しめた。茂兵衛はいうまでもなく幸四郎だが、お松は猿之助が勤めた。澤瀉屋でもかける演目で、先代の猿之助は茂兵衛を何度も勤めている。猿之助もいずれは茂兵衛と思いながら、この難役、お蔦をやっていたように感じた。
前半の酌婦役から、後半は甲斐甲斐しいシングルマザーを演じるそのギャップをこの人ならではの芝居に感じ取ることができた。それ以外では、船印彫師辰三郎を松緑が勤めたが、純朴な雰囲気は松緑のニンなのだろう。猿之助との息も合っていて、すばらしかった。それに猿弥が勤めた船戸の弥八も良かった。この人はこのところ歌舞伎座での登場が多いが、何をやらせてもうまい。
今回は3演目いずれもが、1時間20分前後にまとめられており、観客も性格の異なる3演目を同じ時間の幅のなかで観ることができた。これだけの名優が揃えばできる歌舞伎座の大歌舞伎、しかし中日を過ぎている土曜日の夜の部に空席が目立つのは残念である。


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